2010年9月11日土曜日

予言:アップルはもうすぐ衰退する

今週の Newsweek を読んだら、次々と新製品を出すアップルを無邪気にも賞賛するような記事が書いてありました。(抜粋だけならこちらで読めます → 「アップル、最も革新的な企業」)

その記事では、次々と新製品を出すことについての問題点に触れていなかったので、僕は中身の薄いつまらない記事だなぁ、と半ば批判的に読んだわけですが、それはさておき、その記事は全体的にアップルに好意的に書かれていました。

となると、僕の考えと反するので、どこかに僕が感じたことを書いておきたいと思い、このブログを書き始めたのでした。

僕はコンピュータ業界にいて言うのもなんですが、次々と新製品が出るのが好きではないので、アップルがバージョンアップを繰り返しているのをみて、少々うんざりしています。

ズバリ、アップルのこのやり方は非常に短期的での成功しかもたらしません。
アップルのブームはまもなく終わります。

カッコいい!クールだ!と、そんな程度で賞賛されているうちはいいです。
それを持つこと自体がカッコ良くて楽しいことなので、新製品が出れば買います。

でも、ほんの数十ドルの製品ではないんです。

何度も何度も買い換えるのは、よほど頭の悪い人に限ります。普通の人は、およそ製品が満足したレベルになったところで、新しい端末を買い換えるのを控え出すはずです。

自社製品を次々と新しくして、ついには頭打ちになった例で身近なものといえば、マイクロソフトの Windows と Office でしょう。(古巣を失敗例として出すのは心苦しいですが・・・)

マイクロソフトのマーケティング戦略は伝統的に、
「他社に自社製品を古いものにされるくらいなら、自社で自社製品を古くする」
というスタイルをとっています。

例えば Windows 95 を出したら、それに類似してちょっと画面の様子を変えたような Windows 98 を出して、「ホラ、新製品ですよ!良くなりましたよ!買ってください!」 と宣伝します。 Windows 98 の次は Windows Me と続きます。

Windows 3.1、95、98、Me といった製品をリリースしていた当時、マイクロソフトはブームを作り出し次々とヒットを飛ばしていたといえるでしょう。

しかし同時に、「すぐにハングアップする」 「クラッシュする」 という悪評もついてまわりました。

これに応え、マイクロソフトは Windows の改善を続けました。
これは本当の改善でした。

ついにマイクロソフトは Windows 95/98 などの DOS 系の OS を捨て、安定した Windows NT 系の OS 一本に絞ることにしました。

これが実は、マーケティング的には 「良過ぎた」 のです。

1999年、Windows 2000 の開発が終わろうとしている時、僕はマイクロソフトの社員でした。

このとき驚いたことに Windows 2000 が完成する前に、全員が実際の業務で開発版の Windows 2000 の利用を強制させられたのです。マイクロソフトの用語で言うところの、「ドッグフードを食べる」 というやつです。これが社員全員に徹底されていました。

普通、全員が開発版を実際の業務で使うということはありません。しかし、Windows 2000 の完成は社運をかけたものとされ、全員が実際に利用して動作確認をしたのです。

こうして完成した Windows 2000 は非常に安定した OS でした。

しかしその後、Windows 2000 にはセキュリティの問題が多く発見されてしまったために、クライアント OS 版の Windows 2000 は Windows XP へと直ちに置き換えられます。このときに Windows のセキュリティアップデート機能の仕組みが実装されます。

OS 自体安定して、セキュリティの問題もかなり解決した Windows XP はご存知の通り、いまだに多くの人が満足して利用しています。現在、今でも多くの企業で Windows XP が使われています。

これでブームは終わりました。
もうユーザーは満足してしまったのです。

同様のことは Office にもいえます。Office 2003 頃に安定感が強まり、製品として落ち着いてからは、Office 2007、2010 と、わけのわからぬ使いにくいだけの改悪が続いています。(といっても、Office 2007 からの Quick Styles 機能は大好きですけどね)

しかし、マイクロソフトのマーケティング体質は変わりません。

新製品が実際に出荷される頃には、次のバージョンの宣伝をして、現行製品のユーザーはまるで古い製品を使っているような感覚にして、次に出る製品の良さをアピールし続けています

僕はコンピュータを仕事にしているので、それでも情報収集は続けていますが、お客さんの目は厳しいものがあります。

マイクロソフトに関して言えば、堅実にセキュリティの問題等、企業が受け入れられるよう改善を続けているので、ブームということはなくなっても衰退というほどでもありません。

OS は周辺機器とのつながりが強く、一度組み込んだ OS をおいそれと手放せない、という理由もあるでしょうし、単純に対抗馬がまだ出現していないから、という理由もあるでしょう。(デスクトップ Linux が虎視眈々と追撃を狙っていますが、まだシェアを奪うというほどではありません。)

アップルの製品に話を戻します。

音質や画質など、機能的に十分でないとユーザーも感じているものがあれば、良い物を使いたければ買い換えるかもしれませんが、当然ながら機能はユーザーが満足するレベルに早く上げないといけません。

機能さえ落ち着けば、見た目がちょっと変わった、などというマイナーバージョンアップだけで製品に飛びつく無意味なブームはすぐに終わるはずです。

しかもデスクトップ OS とは違って、周辺機器との縛りも少ないので、本質的に競合に取って代わられやすい製品群ですから、独占を続けるのは難しいはず。 それに iPhone OS よりも開発者に優しい Google の Android が既にあるので、今後より競争が厳しくなるはず・・・。

だから僕はアップルが次々と新しい製品を出すからと言って、イノベイティブだ、などと手放しで褒める気にはなれないのです。単に、10年以上前からマイクロソフトがやり続ける旧式のマーケティング戦略だとしか思えないのです。